■第八話<関わりを深めて>
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「最近は毎日忙しいようね。毎朝話題が豊富で退屈しないわ。」
局長室にある長いソファーに腰をかけて麗華が甲子郎に話しかける。
彼女の隣には琳がおり、髪を梳かしてもらっている。
「それでどうだったの?」
琳が唐突に聞き始める。おそらく矢子のことだろう。
「桐島矢子のことか?少し話をした限りだが
何処にでもいるような大人しい娘だった。
村雲からの資料と違いは無いようだったし、
とりあえず問題は無いといったところだな。」
「そう、じゃあもうその子の事で動くことは止めるのかしら?」
髪を梳かしながら質問をする麗華。
すると、向かいの椅子に腰をかける甲子郎。
「ええ、メインで動くことは止めます。ですが時々は
気にかけてみようと考えています。
例の二人組みも関わりましたし、何より少し危なっかしい。」
「やさしいのね。」
「人を守ることが仕事の根本ですよ。」
そう言うと、琳は横目で甲子郎に話しかける。
「ねえ、二人組みってどんな感じなの?」
「まだ資料を見ていないのか?」
「あんなのじゃ分からないよ。」
「そりゃそうだな、俺も分かっていないんだからな。」
「駄目だね。」
「だから今、近づいて探っているんだろう。」
すると琳は立ち上がって甲子郎に近づく。
「その二人に会いたい。」
「んあ?」
「私なら何か分かるかもしれないよ?」
そう言うと琳は麗華を見つめる。
「そうね、琳の鋭さは抜きん出ているから何か分かるかもしれないわね。」
「じゃあ決定。」
甲子郎に視線を移し、澄まして言う琳に頭をかいて呆れる甲子郎。
「おいおい・・・。まあいいだろう、確かにお前なら何か分かるかもしれないな。
連絡取って予定を合わせるから二、三日待ってくれ。」
「やだ、今から会う。」
「無茶言うな。」
すると麗華を再び見つめる琳。
「瀬戸くん。」
「分かりましたよ、連絡取りますって!」
静かに名前を呼ぶ麗華の圧力に負けた甲子郎は
渋々琳の要求を飲むことにした。
「今日は冷えるから、たくさん服を着ていくのよ。」
「分かった。」
それをよそに、麗華は優しく琳に接しているのであった。



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