■第十五話<駆け巡るそれぞれの想い> -1- 「悪い話ではないと思いますが?」 深い暗闇の中からうっすらと意識が覚めるような感覚の中、 そのような男の声を聞く蘭子。 しかし、感覚がぼやけており、それが何を言っているのかは、はっきり分らない。 今は夢の中だろうか?意識が曖昧で、現状は全く把握できないまま、 再び眠りにつこうとする。 「帰ってください。」 自分のそばから櫻子の声が聞こえる。 『櫻子さん?』 声に反応してうっすらと目を明けると、 両手を広げて立っている櫻子の背中が見える。 『何をしているの?』 もうろうとする意識の中、声を出そうとするが 力が入らず、一言も発せられなかった。 『夢・・・なのかな?』 そう思うとスッと意識を失う蘭子。 そのまま再び眠りについてしまった。 次へ▼ |
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