■第十四話<理由>
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「随分と大事にしてくれたわね。
さすがに破壊された一帯の封鎖や
一般人に覚られない為の工作は
厳しかったわよ。」
薄暗い局長室に小さく響く声。
麗華は椅子に座りながら甲子郎に話しかける。
「申し訳ないですね。ただ、仕方無かったといえば仕方無かったわけですが。」
「・・・そんなに嘉島は手強いのかしら?」
その質問をため息の後にすると、甲子郎は困ったように両手を挙げて首を振る。
「アイツは異常ですよ。・・・結構マジでやったのですが捕らえられなかった。
正直手の内を見られたことは痛手です。」
少し参った素振りを見せると、麗華は少しの間甲子郎を見つめる。
「でも君も相手の手の内を見ることが出来たじゃない。」
「まだ隠し玉がある可能性が大です。」
「そう思っているのは嘉島もじゃないかしら?」
「でしょうね。」
淡々と答えると報告書に目を通す麗華。その間は沈黙が続く。

「・・・それで実際に何度かやり合ったわけだけど、
正直なところ勝算はあるの?」
再び話を振る麗華。するとニヤっとして答える甲子郎。
「無い・・・と言ったらどうします?」
「私が直に出向いて相手をしようかしら?」
「それは興味深い。ですがその必要はありませんよ。
・・・自分一人でどうにか出来ます。」

そこまで話すと、再び軽くため息をつく麗華。
「そう、じゃあまたしばらくお願いするわ。
でも、問題はこれだけじゃないのよね。
どうするの?毎日つるんでいるお友達は。」
嘉島の一件は一先ず置くことにして、話題を変える麗華。
話は琴和たちの事になる。
「・・・確かに生半可な力では命を落とす状況になってきましたね。
昨日も自分たちに降りかかったものは処理できていたようですが
もし、嘉島相手だったらきっと助かってはいなかったでしょう。」
その答えを聞くと少し考えた後に甲子郎の目を見る。
「・・・そろそろ保護かしら?」
「そうですね、今まで接した結果、禦の内部に入れても
問題はないと判断します。
ですが本人たちがどうするか。
それに個人的にはもう少し様子を見てみたい気がします。」
「まだ時間が欲しいということね。
でもこれからも守りきれるの?」
「ええ、大丈夫ですよ。それに・・・。」
その時ふと、矢子を逃がした嘉島の事が頭に浮かぶ。
「それに?」
「いえ、何でもありません。」
「そう、まあいいわ。この件も基本的に貴方に任せます。
でもいざという時の為に準備は必要よね。
局員を一人、彼等の身辺調査に当てるわ。」
「監視をするのですか?」
「そうよ。いつでも保護出来るように本当に安全か下調べはしておかないとね。
しかも新人の子がいてね、丁度研修を兼ねた簡単な作戦を探していたのよ。
彼等の監視なら危険度は然程ないでしょう?」
そう言われると少し考える甲子郎。
「そうですね、夜の見回りの時くらいでしょうか。危ないのは。
まあ奴等の見張りをするのであれば、自分の近くにいるという事。
何かあったらフォローできますね。」
「そうね、なら問題は無いようだから早速手配するわ。
そうだ、ついでに桐島矢子についても調べて貰おうかしら。」
「どういうことです?」
「もう無関係とは言えないじゃない。
その中で村雲の提出された資料を全て信用するのもあれだしね。
調べておくに越したことは無いと思うけど?」
「確かに。それで何時ごろから監視を?」
「そうね、早速今からでも。
ところで今晩はどうするのかしら?」
「と、いいますと?」
「彼等は昨晩、戦いの恐怖みたいなものは感じなかったのかしら?」
「どうでしょう、よく判りません。
でもまあ連絡は入っていないのでおそらくは見回りを続けるのかと。」
「そう、なら夜になったらお願いね。
あと新人の子の資料は後で渡すわ。」
「了解です。」
そう言うと部屋を後にする甲子郎。
室内に自分一人の状態になると、麗華は早速
局員の手配をし始めるのであった。



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