■第十三話<敵として> -1- 「なあ、いつまで家に居る気だ・・・?」 呆れた様子で蘭子に話しかける琴和。 「まだ!今いいところなの!!」 そう背中を向けて返事をする蘭子。彼女はゲームに夢中である。 現在時刻は23:00。怪物の出現時間は過ぎたところだ。 今日は日曜日で見回りの無い日であったのだが、 蘭子は夕方からゲームをするために琴和の家を訪れていた。 もちろん櫻子も一緒である。 「蘭子ちゃん、小田原さん困っているよ?」 琴和のことを気遣い、櫻子が注意をする。 「そうなの?」 平然と聞く蘭子。 「いや、別に困ってないよ。」 本当に困ってはいなかったので、何気なく否定をする琴和。 「・・・そこは嘘でも、困っていると言ってくださいよ。 そうしないと何時までもいますよ。」 呆れたように櫻子が言うと、琴和は手を打つ。 「あ・・・。」 「アハハ、本当にいい人だね。」 蘭子が反応すると、櫻子は困った顔を見せる。 「もう、だからって図々しくするのは良くないでしょ。 大体女の子がこんな時間まで遊んでちゃ駄目でしょ。」 「・・・確かにそうですね。」 櫻子の言葉に客観的な意見を見出し同意する。 そこは夜遅くまで一緒にいることがほとんど毎日だったため、 気付かなくなっている部分であった。 そう思うと電話を手に取り番号を入力する。 「電話ですか?」 櫻子が不思議そうに尋ねると、うなずく琴和。 「ええ、そうですよ。」 そう言ってニッコリすると、蘭子に話しかける。 「今からタクシー呼ぶから、それで帰れ!」 「ちょっと!待ってよ!!」 慌てて振り返る蘭子だったが、既に話中になっていた琴和。 簡単に事を済ますと、蘭子に1000円札を渡す。 「ほら、これで帰れ。多分深夜料金で足りないだろうけど、 そのくらい自分で出せよ。」 「強引だなぁ・・・。」 目を細めて不服そうに蘭子はぼやくが、片づけを始め帰り支度をする。 使っていたゲーム機をしまい、コップ等を洗う。 そして冷蔵庫を開けたと思うと、何かを確認し始めた。 「何やっているの?」 不思議そうに琴和が尋ねると「食材のチェック。」と答える蘭子。 明日の夕食のためとの事だ。 琴和は意外なところでマメな姿を見せる蘭子に、時折感心する事があった。 今もその時である。 そうこうしている間に、家の前に到着するタクシー。 「多分時間も過ぎているし、タクシーも使うので安全だとは思いますが、 櫻子さん、何か合ったら連絡をお願いしてもいいですか?」 玄関に向かいながら琴和がお願いをすると、快く引き受ける櫻子。 そして「おやすみなさい。」と言葉を残して、二人は帰宅するのであった。 次へ▼ |
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